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『PLAYBOY』インタビュー


ー『PLAYBOY』制作のきっかけは?

去年出したシングル「やわらかマシーン」のあとどうしようかとdots toneの龍谷君と話していたところ、ひとまず正式のスタジオ音源を出す前に弾き語りのアルバムを出そうと話していたのが始まりです。

ーまるで弾き語りの音源とは違いますね。

<あすなろう>というバンドで3枚の音源をリリースして、ソロではまた1から、まったく何の制約もなかったので、制作当初はとんでもなく暗い、いったい誰がこんなもん聞くんだろうという自己反省的な音楽を生み出そうと思っていました。今思うと、当時何かあったんでしょうかね〜(遠い目)結果、今作の世界が生まれたのでもしかするとこれが僕の闇の部分なのかもしれません。

あと、youtubeでアップしているカバープロジェクトや「2014年サンプリングの旅」などの経験も大きいです。その曲が好きだからこそ、原曲をどこまで壊せるのか、あれはやっていて本当楽しいですし、カセットMTRとの距離感もここで縮められた気がします。「2014年サンプリングの旅」は単純に素材があればなんでもできるということに気付けたのが大きいです。動物の鳴き声はとっても魅力的な楽器だなぁと思ったり、メタルのドラマーとファンクのドラマーは発音からどのタイミングでメタルとファンクに派生するのか気付けたり。これは大変話が長くなります。

ーなるほど。では音に関してこだわった点は?

なるべく演奏している時の表情や、弦の振動、空気感。それが伝わるようにしたかったのが大きいです。それもあってカセットMTRを主に使用しました。例えばビートルズの「ホワイトアルバム」とても好きなレコードなのですが、音楽を作ることと演奏することがまるでひとつの塊みたいなヴァイブレーションと言いますか、そういうものが好きなんです。ビートルズの「アンソロジー」シリーズなんてもはやデモ音源ではなく完成品だと思ってます。

ー製作時気に入っていたレコードは?

Kevin Ayers、PAUL McCartneyの1stや「RAM」とか。ミシシッピジョンハート、SYD BARRET、DONOVAN、JOE MEEK、FROGS、The Soft Boysとか、アベジュリーさん、ヤマジカズヒデさん、、挙げるとキリがありませんが、、ドラムを録音する前はMedeski Martin & Woodを聴いて気持ちを高めてイメージをひろげていました。結果、メデスキーを聴いたイメージなんて全然ひろがっていませんが。あとはセルジュゲンズブールとかフランスのポップミュージック。ちなみに「ファンクのファン」の正式名称は「フレンチファンクのファン」です。フランスの70年代ファンクのサウンドは本当に濃厚、最高。あとジョンケージはいつでも頭の中にいますね。うーんと、あとはビートハプニングなどのKレーベル関係の音からもすごい刺激を受けてます。あのサウンドはほんと最高ですよね。

ー今作は今までになかったブルースの影響が見られます。

ソロでライブやっていくうちに、自分の演奏の中にあった、スウィングしている感覚に気付いたのが大きいかもしれません。気持ち良く弾こうとすればするほどハネてくんですよね。これは自己再発見的なストーリーです。以前はブルースをフレーズで聴いてたんですが、あの定型のフレーズですね。それで全部一緒だと感じていたのが、あのフレーズが内側から出てくるグルーブだと知ってから、今どっぷりはまってます。今ではまるでカラフルな音楽です。ジョンリーフッカーとか、同じフレーズを延々とずっと聴いてられますもんね。ミニマルミュージックのルーツだと思います。

ー今作はいわゆる宅録ですね。録音でこだわった点は?

機材もそんなに持っていないので、その中でアイデアをどう形にするかシンプルに考えてました。ドラムとグランドピアノ、ローズピアノと一部のギターは埼玉の<Studio DIG>で録音しました。あとはすべて僕の部屋と頭の中<LAMN STUDIO>です。

自分の中でもはっきり答え出ていないことを重ねていきたいと思っていたので、例えばバスドラを踏むのではなく広辞苑を叩いてる音だったり、楽器は別録りではなく一本でせーので録ったりしてます。「アイ・シー・ユー」とか「ファイティングポーズマン」、「ホテルリゾート」の歌とコーラスとかはせーので録ってます。あとはアクシデントを全部取り入れたかったというのも大きいですね。「テレフォンナンバーない」は気付けばベースレスのヒップホップになったのもアクシデントの一つです。なんせ今作の仮タイトルは「ビッグ・アクシデント!」でしたから。

ー今回はゲストミュージシャンもいますね?

GLIDERの栗田ユウスケ君、栗田マサハル君ですね。これは今思うと面白い話ですが二人には何も言わずに楽器を持ってもらったんです。今から何をするのか、CDを制作することすら伝えずに。この二人なら付いてきてくれると思って。そしてビッグアクシデントのコンセプトもあるから曲の構成も決めずにカセットMTRを回しました。ホワイトボードに書きながら次はこう次はこうね、とやりながら。「アイ・シー・ユー」「ファイティングポーズマン」「ホテルリゾート」「ジョンとヨーコのロッカバラード」「あいまいアイデンティティ」を一緒に録りましたね。「ファンクのファン」も一緒に録ったんですが、帰宅したら上書きしてしまってて消えていたのでこれは修正不可能のアクシデントでした。失ったものはどうにもならないということをここで再確認しました。ユウスケ君にドラムを叩いてもらったのもビッグ・アクシデントの精神ですね。あのビートはドラマーにはなかなか叩けないと思うので。ちなみにあの曲は二人のユウスケ君が叩いてます。

「ジョンとヨーコのロッカバラード」ではマサハル君にローズピアノでテープの限界まであのフレーズを弾いてもらいました。当初はメロディもちゃんとあるシンプルかつ壮大なバラードだったのですが情景が浮かびすぎてこのような結果となりました。

ー歌詞については?

歌詞こそ最大のアクシデントですね。

なるべくは可能な限り何も考えないようにしてます。「ああ今日はいい天気だな」くらいの感想で言葉が止まるくらいの。その先は思想の闇の崖、その寸前で止まるくらいの境界線を探しています。

あと一つ言えるのはロックと日本語の関係はヒジョーに興味深いということです。

それを今回再発見しました。

ーMIXはもはやおなじみのDEWマキノさんですね。

あすなろうで一緒に重ねてきた経験があるし、音楽の笑いのツボも似てるし話が早いですね。録音は全部僕がやったのでMIXだけDEWマキノさんにやってもらうというのは初体験でした。開口一番「あいかわらずめちゃくちゃだね〜」でしたが。コンプのかけ方、音の磨き方。曲の土台からの組み立て方。早いし的確。技師と勝手に呼んでいます。町に一つはあってほしい自転車屋さんのように。困ったら技師に相談だ。

てなわけで、アルバムのMIXは僕とDEWマキノさんと半々でやりました。今聴くととっちらかってないのは遊び方が似てるからでしょうか。クレジット表記に書いてますので二人のMIXを聴き比べるという面白さもありますね。

ー<たどたどしさ>というのも今作のキーワードだと感じました。

僕のドラムやなんちゃってトランペットにしろ、全部へたくそですからね。先日「テレフォンナンバーない」がラジオでかかったのですがそのパーソナリティの方が「このボイパがまた下手で、それが最高なんですよ」と言っていただいてましたが、ほんとそういうことですね。お化粧や修正はいくらでもできるけど、原石はまさにそこにしか存在しませんもの。これが今作のたどたどしさ、ということかもしれません。ノイズやミスの音はあまり消していませんし、アコギの弦はサビサビのものを使ってたり、あと歌以外はテイクをほぼ重ねていないのも大きいと思います。やはり発生当初のエネルギーというのは計り知れないものがあります。「ゴルフできない」のギターとかはワンテイクでやったので音も外していますが、情熱が吹き出した!と思ったので採用しました。「チェスできない」に至っては寝起きですぐにアコギを手に取ってチューニングをランダムに狂わせて即興で歌ったものです。3時間後、目がちゃんと覚めて改めて聴いたところ、よしうまくいったと思ったのでこれも採用です。この曲は完全に再現不可能です。いろいろ遠回りはしてますが音の分離だけは意識的にやりました。

ーでは最後に一言お願いします。

『PLAYBOY』は現時点で僕が考えるHi-Fiサウンドだと思ってます。

新しい、古いという時間軸のHi-Fiではなく、今グッとくるサウンドという意味で。

あと、歌詞もぜひ覚えてライブで一緒に歌ってください。きっと楽しくなれますよ。

極彩色のベッドルーム色男サウンド「PLAYBOY」をよろしくお願いします。

<PLAYBOYダイジェストムービー>

<ホテルリゾートMV>


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